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次世代リーダーインタビュー(第8回・前編) 「あなたの出身国を言えますか?~『地球市民』に囲まれた仏MBAの生活」(揚岩康太さん)

次世代リーダーインタビュー(第8回・前編)

「あなたの出身国を言えますか?

~『地球市民』に囲まれた仏ビジネススクールでの生活~」

次世代リーダーのインタビュー、今回は総合商社からフランスのビジネススクールINSEADに留学されている揚岩康太さん(29才)にお話を伺いました。

 

九門)こんにちは。今日はよろしくお願いします。東京でお会いしてから、14年12月にフランスに留学されたと思いますが、INSEADでの生活はいかがですか?

 

揚岩)とても充実しています。フランス滞在は14年12月から半年が過ぎたところで、INSEADは五学期制なのでいま3学期目に入ったところです。1年で通常2年かかるビジネススクールの内容の8割を学ぶので凝縮されたカリキュラムになっています。

 

九門)ビジネススクールではどういうバックグラウンドの人が多いのですか?

 

揚岩)単純にこういう人が多いとはいいにくいのですが、職業的なバックグラウンドでいうと、コンサルティングファームや金融業界出身の人が全体の4割、それ以外のビジネス経験を持つ人が5割、残り1割が政府機関や医者、弁護士などの仕事に就いていた方です。

 

九門)さまざまなバックグラウンドの方がいると思いますが、共通点は何かありますか?

 

揚岩)グローバルシチズン(地球市民)的な感覚を持った方が多いですね。INSEADの特性としてグローバライズされた環境があり、80か国から学生が来ていて2重国籍や3重国籍の人も少なくありません。国籍が一つであっても、例えば生まれた国、育った国、勉強した国、働いた国などがすべて違うというケースも普通なのです。そのため、国籍にとらわれない考え方の人が多いですね。

 

九門)地球市民的な感覚という話が出ましたが、それは具体的にいうとどういうことなのでしょうか?

 

揚岩)特定の国にアイデンティティを置いていないということです。先に申し上げた通り、自分はこの国の出身といえない人が多いためです。地球市民的な感覚を持つことの良さは2つあります。1つは、お互いに寛容になれるということです。特定の国や宗教にとらわれなくなるため、対立の概念が薄まります。人類皆兄弟という感覚に近づくということです。2つ目は、物事を相対化でき客観視しやすくなる点です。国民国家、民族、宗教といった概念を自分とも他人ともある程度切り離して考えられるのではないかと思います。

 

九門)なるほど、そこまで国際的感覚を持った学生が集まる学校は日本には少ないので、多様性の感覚が日常的に養われそうです。

これまでの2学期ではどういう勉強をされましたか?

 

揚岩)これまではすべて必修科目で、ファイナンス(財務)、アカウンティング(会計)、マーケティング、ストラテジーといった、MBAで一般的な基礎科目が多かったです。特徴的だったのは、この2学期は基本的に5人のグループで過ごすということでした。宿題、試験などを国籍やバックグラウンドが異なる5人のメンバーで常に共同作業するのです。私のグループもインドに住んだことがないインド人の営業マン、フランス系カナダ人の科学者、親の反対を押し切ってシンガポールに移住した中国人コンサルタント、トルコの高校から直接オックスフォード大学に進学したトルコ人銀行家などバラエティに富むグループ構成でした。

 

九門)私がアメリカの大学院留学時代にもビジネススクールの授業をとったことがあり、その時もグループワークが非常に多かったのを思い出しました。メンバー間で価値観が衝突することもあると思うのですが、どんな気づきがありましたか?

 

揚岩)そうですね、最初は険悪になったこともありましたが、腹を割ってお互いにいい点と改善すべき点をフィードバックしあうような時間を設けることで4か月後にはとてもよいチームになりました。

 

大きな気づきは肩の力を抜いて自然体でいるということを学んだことです。INSEADの学生はいい意味でエリート意識があまりないと感じています。志は持っている人が多いですが、選ばれし者という意識があまりないと思います。

 

九門)その点はアメリカのビジネススクールとは少し違う印象ですね。アメリカでは、どちらかというと、自分達はリーダーであるという意識が強いように感じました。エリートと言う意識ではなく、志を持っているというのは具体的にはどういう感じなのでしょうか?

 

揚岩)自己実現や自分の楽しみとして社会に貢献するという意識ではないかと思います。たとえば、シンガポールの中央官庁から派遣されてきている夫婦がいて、国費派遣で非常に優秀な人たちですが、普段は全く肩肘を張らずに、自然体で楽しく話をしています。ただ、大事な時には自分の信念をもってクラスメートに伝えたりします。

 

先日もシンガポールのリークワンユー元首相がなくなった時には大使館に行って弔問をされていました。そのあと、クラスでリークワンユーがどういう人物でシンガポールにとってどういう人なのかを語っていました。つまり、シンガポールの政府代表として心の中には確り矜持を持っていながらも、普段はあくまで一人の人として自然体で過ごす、と。そういう姿勢は人間として好感を持てると思います。

 

九門)日本にいるときにはあまりそういう人とは出会わないのでしょうか?

 

揚岩)日本でも愛国心を持っている人は多いと思うのですが、何かが違うと感じています。私もそうなのですが、海外に行くとなんとなく肩肘を張って日本をアピールしたくなってしまう。特に最近、日本はこんなにいい国だという情報がメディアや本などを通じて多く出ていますが、大々的にやりすぎると健全な愛国心にならないような気がしています。今一緒に学んでいる人たちもそれぞれ何らかの形で郷土愛は持っているけれど、肩肘張って外にアピールするということはあまりなく、奥ゆかしさがあると感じるのです。

 

九門)それは面白い視点ですね。日本人は自分の考えや思いをあまり外に発信しないと一般的に言われ、日本人の方が奥ゆかしいような気もするのですが。

 

揚岩)今まで外向きに言っていなかった分、反動で今それを言い始めたのかなとも思います。でも、自分たちのプライドを満たすための愛国心はあまり美しくないのではないでしょうか。わざわざ外に向かってアピールしなくても、時間に対する正確さや物事を放り出さない姿勢など、日本人の特性は行動に現われますし、自然と好意的に受け止められます。自然体で、というのが重要だと思います。

 

九門)そうですね、日本の素晴らしい点を心底感じて生きていれば、普段のアクションに出ますね。何かが足りないと感じていてそれを埋めるためにアピールすると、少し違った伝わり方になります。

‐中編 http://www.kumontakashi.com/?p=1068 に続く‐

 

プロフィール


1985年、北海道生まれ。

2010年に東京外国語大学を卒業後、総合商社に入社。

鉄鋼製品の海外営業担当として欧州、アジア、北米、アフリカ、中東地域でのビジネスに携わる。

2015年1月にINSEADに入学、同12月に卒業見込み。

 

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Category: 社長コラム

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